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──俺さ、小学生のころ、いじめられてたんだ
あの日、矢吹さんはカウンターに頬杖をつき、カクテルグラスの氷を見つめながら話してくれた。
「いじめる理由なんて、たぶんなかったんだろうな。ガキの頃の俺らが、学校終わったあとに日が暮れるまで遊びほうけてたのと同じくらい、当たり前で自然なことだったんだと思う」
それは良くないことだけど、と付け足した。
「中学に上がってからもいじめは続いて、前は笑って堪えてたけど俺もう我慢の限界でさ」
矢吹さんは自分の左の耳たぶについたピアスを触った。
「中2の春に、堪えられなくなって泣いた。そのとき兄貴のピアッサーで初めて開けたピアスが、これ。
開けたときの痛みがさ、なんか心に染みるってか…なんつうんだろう。びっくりするくらい気持ちがスッキリするんだ」
それから全部で七個開いているピアスの話を一つ一つしてくれた
あたしは悲しげな目をする矢吹さんに、なぜか見惚れていた。
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