JET-2 野望

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よく俺はこんな仮想現実の世界へ引きずり込まれる。 小学4年生の時、初めて兄と俺専用に、共用の所有物として買ってもらったCDプレイヤー。 当時は珍しかった「コブラトップ」という機能を搭載したかっこいいやつだ。 それが嬉しくて毎日、毎日ラジオを聞いていた。 石油ストーブの匂いがする部屋。 コタツに入り、漫画本を読む、なんの変哲もない日曜の昼下がり。 その時事件は起こる。 ラジオから、モノラルで土臭い、そして汗臭い、カスッたギターのイントロが流れる。 次の瞬間、どっかの外人が意味の分からない英語で吠えはじめた。 瞬間、俺は感電したかのような強烈なしびれに襲われた! 本を読む手が止まる。 体が動かなかった。 何かが俺の体全体を押さえ付け、心臓をたかぶせた。 不思議と恐怖は無い。 血液が沸騰したかのようにフツフツ、と音を立てているのが分かる。 単調なリフ、モノラルな音、ワイルドな歌声。 それは、東北の田舎町に住むくそガキの元へ、時空を越え、海を越え、国境を越えて届いた、悪魔からの招待状、 ZZ TOPの「TASSHU」だった。 それは運命か、それとも定めか・・・。 その時から、俺の心の奥底には、悪魔が住み着いていて、時折、ロックンロールという地上最悪の黒魔術で召喚されては、俺をその世界へと連れ去る・・・。 俺は待ちわびていた、そんな悪魔が、この退屈な毎日を変えてくれる事を・・・。
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