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とにもかくにもバイトが始まる。
まず最初にすることは、飲料物の補充点検だ。
このくそ寒い中、冷蔵庫の中に入って客共が買っていった飲料物の補充をする。
こんな季節でも冷たい飲み物を求める奴は後を絶たない。
今日も「午後の紅茶」あたりの減りが多い。
俺はかじかむ手を温めながら補充をする。
誰かが飲料物コーナーの戸を開け、緑茶のペットボトルをつかみレジへ持っていく。
どーやら俺の存在にはきずいていない。
ちょっとシャドーマンになった気分だ。
それが終わると今度は、店内の掃除だ。
なにやら、上にハンドルが付いていて、下に巨大な丸いブラシ見たいなもんが、グリングリン回っているマシーンで床磨きをする。
これはなかなか難しい。
下でデカイブラシがグリングリン回っているからハンドルを取られる。
もし、操作を間違って、少しでも壁や棚にかすりでもするもんなら、巨大怪獣モスラの用に、白い粉をバフッ!って撒き散らす。
最初は力ずくでグイグイやっていたが、これには「軌道」というものがあるらしく、その軌道に逆らわず、若干、方向を定めてやるとスムーズにいく。
このモンスターを飼い馴らす事ができれば、コンビニの店員として認められたことになる。
俺は四日かかった。
先輩の集団が酒を求めてコンビニに入って来た。
わいわい言いながら、いくつかの酎ハイやらビールやらをカウンターに運ぶ。
「これ、一本ただで通してよ、今度女の子紹介してやっからよ!」
「あ、いいっすよ!」
俺は二つ返事でその要求を飲む。
田舎町の深夜のコンビニ、客はまばらだ。
静かな店内には今流行のJのポップスが流れている。
外は漆黒の闇、ガラスがまるで鏡の用に等身大の俺を映し出していた。
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