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掃除が終わる頃には発注した商品が届く。
俺はそれを受け取り、商品をすべてチェッカーで確認した後、決められた場所へ陳列する。
客はいない。
静かな店内。
コンビニのドアが開く。
「いらっしゃいませー」
俺は客を見ずにもくもくと陳列作業を続ける。
誰かが俺の背中をそっと叩く。
振り替えると、そこにはクラスメイトの由里香がにっこり笑って立っていた。
「あれ、なんだおまえ」
「へぇ、きちゃった」
静かな店内。
くだらない流行歌が鳴り響いている。
奴の家は町外れの人気の無い所にある。
ピアノと習字がうまくて、昔から箱入り娘で有名な奴。
マフラーに埋もれたほっぺたが赤い。
照れ臭そうに笑いながら彼女が言う。
「部屋の窓から抜け出してきたよ。」
奴の親父は恐い。
「まじか、見つかんなかったか?」
「大丈夫、たぶん・・・。んでもここまで来るのが一番恐かったよ、だって明かりないんだもん、走ってきた。」
少し、息があがっている、ホッぺが赤いのもそのせいだろうか?
時計はもう三時に差し掛かる頃だった。
「んでどーした?」
「ん?これ渡しに来た。」
差し出したのは、一通の手紙。
「あぁ」
俺はそれを受け取る。彼女が照れ臭そうに笑う。
左の八重歯が若干上唇の下から見える。
それが愛らしい女だった。
ちっちゃい体に目一杯厚手の上着を着こんだ彼女が、手をポッケに突っこんだまま言う。
「バイトがんばれよ。」
「あぁ・・・がんばるよ」
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