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「んじゃ、その手紙、バイト終わったら読んでね。」
「あ、分かった」
「んじゃね、邪魔すると悪いから。」
「あぁ、なんかわりぃな。」
彼女がドアを開けて闇の中へと消えていく・・・。
有線放送がうるさい、人のいないコンビニ。
副店長があいもかわらず、控え室でパソコンをいじっている。
「あいつ、抜け出してきたんだ」
ふっ、と思う・・・。
女の子の家に外泊することすら禁止されているような箱入り娘。
深夜過ぎに部屋を窓から抜け出して、外にでるなど、彼女にとっては、一世一台の大冒険だったのだろう。
・・・。
陳列が終わり、廃棄処分の弁当と雑誌を集め終え、肉まんの保温器を洗いおわると、休憩に入る。
休憩が終わる頃には、時計は五時を過ぎたぐらいになっている。
それからしばしゆったりとした時間が流れる・・・。
朝日が登りはじめる頃、ちらほら、早起きな爺さんや婆さんが、散歩途中に、牛乳やらヤクルトやら栄養剤やらを買いに立ち寄る。
午前七時半。
この時間になると今までのゆったりした時間が嘘のように、店内は戦場と可す。
田舎ではあるが町に一つしかないコンビニ、おまけに近くにインターチェンジがあるから、みんな一斉にここに立ち寄る。
退社まぎわのラストスパートがはじまる!俺の眠気はピークだ。
客達が次々にレジに商品を運ぶ。
こうなるともうレジからは離れられない。
ひたすらレジを打つ。
いつもの土方の集団が店に入ってくる。
一番でかくて人相の悪い兄ちゃんが今日も俺のレジに並ぶ。
そしてタオルを二つカウンターに置き、こう言う。
「領収書」
毎日タオルを買っていくこの兄ちゃん。
俺が知ってるかぎり、この約一ヵ月の間に、タオルを20本は買っている。
「タオルは使い捨てじゃねぇぞ!洗って使え!」
そんな事を思いながら、領収書の出し方を知らない俺は毎回焦る・・・。
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