JET-2 野望

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すかさずジョーイが脳天を叩き割る100万ボルトのシャウトを観客にあびせる! 「ひるむな!前だ!」 ジョーイがそう言ったような気がした。 俺は夢中でギターを掻き鳴らす! ジョーイが叫ぶ! 観客のパワーは加速度増してヒートアップする。 俺は必死に食らい付く。 ジョーイのようになりたくて、ジョーイのような男になりたくて、俺は無我夢中でギターを掻き鳴らした。 もう、どこを弾いているのか何を弾いているのか全くわからなかった。 ただ、ただ。何百、何千、何万回と聞いたあの「BLITZKRIEG BOP」だけが繰り返し繰り返し俺の頭に流れていた。 ・・・。 ふっ、と我に返る。 俺は漆黒の闇に突如として表れた、未確認飛行物体のようにまばゆい光を放つ、コンビニエンスストアの前に呆然と立ち尽くしていた。 俺はディスクマンのスイッチを切り、イヤホンをはずす。 少し耳鳴りがした。 足のつまさきが冷たい。 下を見るとスニーカーの先っぽがぼた雪で濡れていた。 空から落ちるぼた雪が傘を打つその音だけが、熱く燃えたぎった俺の心を静めるかの様に静かに聞こえる。 水をうったような、静かな、静かな、そんな夜だった・・・。 手にはびっしょり汗をかいている。 俺は小さくため息をして、コンビニエンスストアの中に入った。
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