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「わたし誘拐なんてされてないっ!」
帰る!帰して!
じたばたと暴れるわたしを困ったように押さえ付ける警官が心底憎たらしく感じた。
なんで飛び出したりしたんだろう。
わたしの阿呆。
「落ち着きなさい!」
わたしが連れて来られてからずっと引っ切り無しに電話をかけていた男が高く声を張り上げてわたしを見た。
そいつが恐いくらい真剣にわたしを睨むから動けなくなった。
「こんな事を今言うのは酷だけど、どうせいつか知ることだから……あのね、さつきちゃんのご両親はもう……」
私を伺いながら今まではっきりしていた言葉を濁したその人を見て悲しくなった。
わたしを創った人が死んだ。
それなのに、なのにどうして私は何も思えないんだろう。
どうしようもない空虚感が涙になってぽろぽろ落ちた。
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