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あの日も、わたしはタキの役に立ちたかった。
二人ぼっちで生き続けるために頑張ったつもりだった。
「さつきっ!」
初めて聞いたタキの大きな声は、あまり好きじゃなかった。
聞きたくなくて、ただひたすらに謝った。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。お願いタキ、捨てないで。
「さつき、聞けよっ!」
いくら謝ってもタキの声は大きなままで。
ごめんなさい。
それでも、わたしを見捨てないで。お願い。
台所で真っ赤に染まったわたしの腕を押さえながら怒鳴るタキに、もっと謝らないといけないのに
タキの大きな声がわたしの声を遮ってしまう。
――――わたし、タキが元気で過ごせるようにお料理がしたかったの。
失敗して、ごめんなさい。
お願い、もう怒鳴らないで。
「―――さつき……頼むから謝んないで。もう、静かにして。頼むから安静にしてくれ。お前は、俺を置いていかないで……」
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