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薄暗い室内。
フィリアはユラリと半身を起こした。
気怠げに髪を掻き揚げると、隣に眠る少年を見つめた。
「……」
穏やかな寝息。起きる気配はない。
それを認めると、そっと頬に口付け、部屋から出て行ったー
自室に戻ったフィリアは、真っ先にシャワー・ルームへと向かった。
熱いシャワーを潜(くぐ)りながら、ふと、目の前に備え付けてあった鏡に目をとめる。
左胸には、くっきりと残る吸血痕。
そして……
所々に付けられた小さな痣。
無表情でそれを眺めていたフィリアはフッと表情を緩め、壁に凭れたー
『フィリア。俺は明日、シェルターに行く』
昨夜…
ベッドの中で、デューイは静かにそう切り出した。
『聖女拉致をきっかけに、吸血鬼達がシェルターを襲い始めた。おそらく……父の命令だ』
静かな声音。
だが、その表情は夜目にも判る程硬く険しいもの。
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