四 傀儡

2/37
237人が本棚に入れています
本棚に追加
/364ページ
薄暗い室内。 フィリアはユラリと半身を起こした。 気怠げに髪を掻き揚げると、隣に眠る少年を見つめた。 「……」 穏やかな寝息。起きる気配はない。 それを認めると、そっと頬に口付け、部屋から出て行ったー 自室に戻ったフィリアは、真っ先にシャワー・ルームへと向かった。 熱いシャワーを潜(くぐ)りながら、ふと、目の前に備え付けてあった鏡に目をとめる。 左胸には、くっきりと残る吸血痕。 そして…… 所々に付けられた小さな痣。 無表情でそれを眺めていたフィリアはフッと表情を緩め、壁に凭れたー 『フィリア。俺は明日、シェルターに行く』 昨夜… ベッドの中で、デューイは静かにそう切り出した。 『聖女拉致をきっかけに、吸血鬼達がシェルターを襲い始めた。おそらく……父の命令だ』 静かな声音。 だが、その表情は夜目にも判る程硬く険しいもの。
/364ページ

最初のコメントを投稿しよう!