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「あの……隊長」
背後からか細い声がかけられ、アキラはハッと我に返った。
見ると、青ざめた顔の少年が怯えたまなざしでこちらを見ている。
「本当、だったんですね……。デューイさんが、吸血鬼だって……」
恐怖の余韻が褪め止まず、ガタガタと震えている。
そんな少年に、ああそうだ。と告げると、静かに立ち上がり、地面に転がったリボルバーをホルスターに入れた。
「ここでのんびりしている暇は無い。被害者の救出活動が先決だ」
言いながら、腕を掴み、少年を立ち上がらせる。
「負傷者の搬送、倒壊した瓦礫の撤去、そして、これから先の警備の強固と聖女奪還について策を考えなければならない。問題は山積みだ」
「あ、あの……」
「どうした」
淡々とまくし立てるアキラに、少年は恐る恐る口を開く。
「大丈夫、ですか?その……デューイさんは、御友人で、フィリア様も、隊長のー」
「余計な事は心配しなくてもいい。ああ言った以上、デューイはフィリアを守り抜くだろう」
だが、完全に信用したわけではない。フィリアが危険に晒されている現状は何も変わらない。
吸血鬼の巣窟に、人間の彼女がたった一人。無事でいる方が奇跡だ。
「フィリアは、聖女は必ず救出する。だが、覚えておけ。その際、奴が抵抗したり攻撃してきた時は……」
その時は、デューイを殺せー
低く強い口調に、少年は声を失った。
そんな身動き出来ずに立ちすくむ背中を、力強い手がバンと叩く。
「いつまで突っ立っている。他の隊員達は救援に向かってるぞ。今やるべき事をやる……それが、俺達討伐隊の役目だ」
「は、はいっ!」
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