四 傀儡

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その頃フィリアは、洗面所の前に立ち、鏡に映る自分を茫然と見つめていた。 つい今し方、今までに無い激しい吐き気に襲われた。 それが何なのか確信した瞬間、驚愕と恐れが全身を駆け巡った。が、それはほんの僅かな間の事。 唇に笑みを掃き、両手でそっと腹を撫でる。 ただ一つの誤算。 それは、フィリアの願いと安全を、より強固なものへと変えていく。 「フ……フフ」 小さな笑い声が漏れる。 それは、蛇口から流れ出る水音によってかき消されてしまったが…… ガタン……ッ 突如、隣の部屋から物音が聞こえた。 フィリアはスッと目を細めると、笑みを押し込め、その隣室……デューイの部屋へと向かったー 室内(なか)に入り、視界に飛び込んできたのは、床に蹲って震えた姿。 「デューイ……」
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