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炎の中、少女は母の腕に抱かれたまま震えていた。
背後から聞こえる悲鳴と怒号。
それは、幼い少女にとって恐怖以外のなにものでもなかった。
「大丈夫か?もう少しだから、頑張れっ!」
息も絶え絶えな女を振り返りながら、男は華奢な手を引く。
もう少し、あともう少しであの方の元に。そうすれば、きっと……
僅かな希望を胸に、三人はひたすら走り続ける。がー
路地裏から複数の男達が現れ、行く手を阻まれた。
銃を突き付けられ、ジリジリと壁際に追い込まれる。
「…パパ……ママ……」
母親の腕の中で、消え入りそうな声を漏らす少女。
その身体をより強い力で抱き締めながら、女は傍らの男の袖を掴んだ。
「あなた……」
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