五 揺れる心

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炎の中、少女は母の腕に抱かれたまま震えていた。 背後から聞こえる悲鳴と怒号。 それは、幼い少女にとって恐怖以外のなにものでもなかった。 「大丈夫か?もう少しだから、頑張れっ!」 息も絶え絶えな女を振り返りながら、男は華奢な手を引く。 もう少し、あともう少しであの方の元に。そうすれば、きっと…… 僅かな希望を胸に、三人はひたすら走り続ける。がー 路地裏から複数の男達が現れ、行く手を阻まれた。 銃を突き付けられ、ジリジリと壁際に追い込まれる。 「…パパ……ママ……」 母親の腕の中で、消え入りそうな声を漏らす少女。 その身体をより強い力で抱き締めながら、女は傍らの男の袖を掴んだ。 「あなた……」
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