一 終わりの始まり

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10日後の朝。 フィリアは寄宿舎の自室で迷いに迷っていた。 「…どれにしようかしら」 下着姿のままで床に並べた衣装を物色する目は、真剣そのもの。 それもそのはず。 今日は、久しぶりに『歌姫』として舞台(ステージ)に立つ日。 吸血鬼襲来によって傷ついた人々の心を癒す、大事な日なのだ。それ相応の身なりで臨まなければ示しがつかない… そんなわけで、起きると同時にクローゼットの中の衣装を引っ張りだし、今に至っている。 何十着にも及ぶそれは、どれも豪華できらびやかなもの。一着一着に違った思い出がある。だけど、今日は… 「よしっ、これにするわ」
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