一 終わりの始まり

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頬に指を当てて唸っていたフィリアはその中の一着に目をつけ、手に取った。 手早く着替え、鏡で身嗜みを整えると、ある人物の所へと向かった― この日、レンはいつにも増して早く目が覚めた。 姉の久々のステージを楽しみにしていたのもあるが、それだけではなかった。 「レン、起きてる?」 ドアの向こうから姉の声が聞こえ、ベッドに座った姿勢で天井を仰いでいたレンは、二・三度瞬いた後、頭を振った。 「起きてる。入っていいよ」 すると、直ぐさまドアを開けて声の主が入ってきた。 「おはよう、姉ちゃん。どうしたのさ、こんな早くに……」 「今日の舞台衣装、あんたに見てもらおうと思って」 「え」 「悩んだのよ、どれにしようか…。でも、迷いに迷った結果これにしたの。あんたが誕生日に選んでくれたやつ」
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