49人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
俺が声をかけるより先に母さんが俺に声をかけた。
「大輝。久しぶりね」
俺の名前を呼んでニッコリと笑った。
そして父さんも声をかけてきた。
「大輝。元気だったか?」
俺は二人に返事をした。
「あぁ、久しぶり。元気だったよ。って言っても死んじゃったけど」
冗談混じりにそう言った。
久しぶりの親子の会話だ。何年ぶりだろう?20年ぶりくらいかな?
そんな事を考えていると父さんがまた話しかけてきた。
「大輝。光りの扉がふたつあって迷っていたろ?こっちが本物だ。よく見てみろ、光りの扉の中を」
そう言って父さんが光りの扉の中を指差した。
光りの扉の中には草原が広がっていた。青い空、太陽に照らしだされて花が凛と咲いている。その花に寄り添うように蝶がまっていた。
とても綺麗な世界だ。
でも俺は確かめなければならない事があった。
この二人が本物かどうかってことだ。
俺はそれを確かめるために父さんに話しかけた。
「この時計を覚えてる?父さんの形見の時計だよ。大切に使ってたんだ」
「あぁ、覚えてるとも、大切に使ってくれてたのか」
その言葉を聞いて俺は後退りした。
そしてこう言った。
「闇の者め!!この時計は俺が自分で買ったんだ!!」
最初のコメントを投稿しよう!