親愛なる君へ

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本当に嬉しかったんだよ。 ねぇ、君は忘れてしまっているだろうけれど。 僕は、卵のカラに閉じこもっていたんだね。 君は言った。カラの外から、たくさんの人達が一生懸命私を呼んでいるのだと。閉じこもって、ひとりぼっちなんだと全てを閉ざした私には届かない。それでも、私もカラから出ようとする。だけど、分厚くなりすぎたカラは、内からどんなに叩いても簡単には割れなくなっていたんだ。 外と内。 同じところを、同じ瞬間に叩くことができれば、どんなに分厚いカラだって、簡単に崩れていく。 そして、その人がきっと、私にとってかけがえのない大切な人になるのだと。君は言った。 外からも内からも声が届かない場所で、そんなことが可能なのかと私は疑った。 だけど、思ったんだ。 だったら、相手は君がいいと。 それを、恋だと誤解した。違う。それは、愛だった。純粋な、人を想う愛。君のことを想うと、それだけで心が温かくなる。心が満たされる。なんて幸せ。 ほら、カラが割れた瞬間に私の前にいたのは、やっぱり笑った顔の、君だった。 大切な君へ、ありがとうよ届け。
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