背中

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ずっと何かを探していた。ずっと誰かを待っていた。それは、君だったのかもしれない。 大人になることが怖かった。 僕は自分の時間を止めた。一度止まってしまった時間は、自分の意志では動いてはくれなかった。けれど、君に出会ってはじめて大人になりたいと思えた。 止まっていた時間が動き出した。 君につり合えるような人間になりたいと思った。だけど、僕は君を信じきれなかった。 今ならわかるのに、今ならきっとできるのに、あの頃の自分の無知さと無力さが、悔しくてたまらないんだ。 君ともう少し大人になってから出会えていたら、何か変わっていたのかな。 だけど、君と出会わなければ、きっと僕は大人になることを拒んだままだった。 もっと違う出会い方をしていたらなんて、どうしようもないことを願わずにはいられない。 君がどこにいても、どんな姿をしていても、きっと僕は見つけられるのに。 同じ道を歩むことはできないけれど、また君とどこかで道が交わることを、僕は信じたい。
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