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砂漠に君臨する双角の飛竜。
象徴でもある一対の角はへし折られ、鋼より硬いその甲殻は粉々に叩き割られ、その強靭な脚は根元から折れ曲がっていたという。
宿のベッドの中に潜り込んでも、中々寝付けなかった。
フルフルを仕留めた達成感は、とうに吹き飛んでいる。
集会所で、タニアから聞いた話が頭から離れない。
ディアブロスを仕留めるほどの怪物。
そんな存在を――――俺は見た事があった。
全身を鎧で纏うその姿。
その手に握り締めた巨大な鉄の塊。
目の前には、空の王者と謳われる真っ赤な飛竜――。
あの時の人間ならば、ディアブロスを倒す事が出来るかもしれない。
だけど――
「……とりあえず、今の俺には無理、だな」
フルフル如きに、あれだけ苦戦してしまった。
いくらフルフルが危険なモンスターとはいえ、飛竜種の中で言えば、中の下、といったところ。
最上級に位置するディアブロスとは比べ物になるわけがなく、ましてや――――
「……リオレウス」
――あの空の王者の前では、フルフルといえども狩られる存在に過ぎない。
威力が違う。スピードが違う。タフさが違う。戦闘技術が違う。
そして、何よりも――――
全てを呑み込む、圧倒的な存在感が違う。
いつになれば自分は辿り着けるのか。
目指す理想はあまりにも遠い。
いや、そもそも――――
そこに辿り着く方法そのものが間違っているのだとしたら――。
記憶に残る、あのハンターの背中は何も答えない。
身体が、今日の狩りの疲れで休息を欲している。
だが、心の中のどうしようもない焦燥感のせいで、今夜は眠れそうにない。
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