二匹の怪物

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くだを巻いていたグラムが、突然、固まった。   目を見開いて、とある一点を注視している。   その先にあるのは――受付のカウンター。   つられて、そちらの方に目をやる。       そこにいたのは、一人の少女だった。   上質の絹を思わせる漆黒の長い髪。 すらりと引き締められた見事な身体。 透き通るような白い肌は水晶を思わせる。   まるで磨き上げられた彫刻の様だ。   それは、どう贔屓目に見ても、美人としか形容出来ない少女。       そんな美少女が、何故かハンターズギルドの集会所にいる。   確かに、服装は同業者っぽいが――。     「やべぇ……ホレた……」     ……隣のバカの悪い病気がまた始まった。   ゆらりと椅子から立ち上がり、迷う事無くカウンターへ向かおうとするグラム。   その腕をがっしりと掴む。     「……何だいキリエ。この手は」   「いいから座れ。女と見れば見境無く声を掛けようとすんな」   「ただの女じゃない。イイ女だ。この機会を逃すと一生後悔する。つーわけでキリエ、離して欲しい。」   「断る。何つーか恥ずかしいからヤメロ」     ギリギリとグラムの腕を握り締める。   歯を食い縛りながらカウンターへ向かおうとするグラム。    と、その時――     「「あ」」     その少女がこちらをじっと見ているのに気付いた。   少女の視線の先は、まるで鎖に繋がれた盛りのついた犬と、それを必死で押さえつける俺の姿。   ……何つーか泣きてぇ。   と、少女がゆっくりとこちらに近付いて来た。     「…………」     グラムと二人、固まったままでその場から動けず。   少女の足が、俺達の前で止まった。     「ねぇ、キミ達ヒマ?」
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