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キノがシャワーを浴び終えて部屋のベッドに腰掛けていると、
「キノさん、夕食ができあがりましたよ」
「おっ、来たね。キノの一番の楽しみでもある食事の時間が」
キノがエルメスのタンクを無言で叩いた。
「いて」
「案内お願いできますか?」
「はい、もちろんです。うちはそれがしきたりですから」
男が喜色満面の笑顔で言った。
男はついてきてください と言って案内する。
エレベータで一階に降りて、受付カウンターの隣りから食堂へ続く道を歩いた。
一人で食べるには大き過ぎるくらいの食堂はキノ以外の客は誰もいなかった。
キノは椅子に座る。
机の上には、既に料理が並べられていた。
具体的には、丸く膨らんだパン、お皿に乗った色とりどりの野菜サラダと牛肉コロッケ、トマトスパゲティにオニオンスープだった。
キノは時間をかけて味わいながらそれらを全て腹の中に収めると、もときた道を戻っていった。
途中、通路の窓から覗いた空は今だ灰色に染まっていた。
「おいしかった?キノ」
部屋に入ると、エルメスが軽快に聞いた。
「ああ。美味しかったよ」
キノはエルメスの脇を通り過ぎてその先の窓から外を覗くと、そのままベッドへ仰向けに倒れた。
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