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その城壁にはいろいろな絵が書いてあった。
その絵はとても大人が書いたとは思えないようなものばかりだった。
「うわー、今まで見てきた国の中ではじめてだね、キノ」
「本当だ。こんなの見たことがない」
キノと呼ばれた若者が城壁に描かれた絵を見上げていると、どこからともなく声が聞こえてきた。
「この国に何かようか?」
まわりを見渡しても、誰もいない。
「エルメス、何か言ったかい?」
「キノ、下っ!」
そこには衛兵が着るような服を着た少年がキノを見上げて立っていた。
「何か用があるかって言ってんだよ!」
「ああ、えっと、僕はキノ。こちらは相棒のエルメス。三日間滞在してもいいかな?」
「…ふん!キノにエルメスだな?一つ質問する。歳は二十歳過ぎているか?」
キノはなぜ聞くのか分からないと思いながら過ぎていないと丁寧に答えた。
「ちっ!さっさと入れよ!」
目の前にある子供の落書きのような絵が描かれている扉がゆっくりと開き始めた。
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