Prologue

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▼ これはきっと、悪い夢だ。 そう、夢に違いない。 現実であるはずが…あっていい筈がない。 目の前で起きている光景は、絶対に有り得ない現象なのだから…。 AM 2:00 夜の闇に包まれ、街灯の明かりのみが道を照らす弥生大橋。 人っ子一人、猫の子一匹いないその橋の上で、私は敵である一人の男と対峙していた。 両手に構えた、己の武器である大鎌を振るう。 死神のそれを思わせる巨大な鎌。 三日月のような、紅い鋼の刃を持つそれは、今まで幾度となく「影」を葬ってきた、自身の誇る最強の武器。 その紅い刃から発せられる、不可視の斬撃。 空を裂き、鎌鼬(かまいたち)として飛来する必殺の一撃。 それを……目の前の男はかわすどころか防ぐ素振りも見せず…あろうことか、こちらへゆったりと歩を進めてくる。 愚かとしか言いようのない行為をするその男の体を、鎌鼬の斬撃は真っ二つに両断する…筈だった。 不可視の刃はソイツに触れた瞬間、音もなく消滅した。 …先ほどから既に八度、同じ攻撃を繰り返し、同じ現象が起きている。 そして自分の行為を、まるでくだらない芸でも見物するかのように、嘲りの笑みを浮かべて眺める女が一人。 一体何故、こんな事になっているのか…。
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