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――じゃああんな女、捨ててしまえばいいのよ。私を差し置いて結婚だなんて、いけ好かない――
私は震えました。
朝野が浮気をしている。会話の内容からしても、昨日今日の話しではない。
――俺も彼女を愛そうと努力はした。だが、無理だった。お前の前では色褪せてしまう、お前以外の女など、どこにいようか――
でも不思議な事に、この状況下にも関わらず私は冷静でした。
この扉を無理矢理開けた所で、傷付くのは私だけだと知っていました。
それより、主人が私の事を愛してなどいないと言う事実が知れただけ、儲けものだと思う事にしたのです。
本の中の門野と同じよう、朝野も私を愛する努力をしていたに過ぎない……最初から私は愛されてなどいなかった。
浅はかな女心とでも言いましょうか、私はそれを真に受けて、偽りの愛だとは気付かずにいたのです。
悔やんでも悔やみきれない、正ににこの事でしょう。アナタなら耐えられますか?このような仕打ちに。
でも私はそれを表には出しませんでした。この事は、私の胸の内に秘めておこう。そう誓い、離れを去ったのです。
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