序章

2/3
1065人が本棚に入れています
本棚に追加
/230ページ
アウグス国の辺境にある村。ヒュウはそこの商人の家に産まれた、まだ十歳の少年である。 両親は仕事で忙しく、また兄弟もいなかったため、毎日がつまらなく、何より孤独であった。 そのためか、ヒュウはいつしか家を出ることを決意した。 そして、それを今夜決行することにした。 月が登り、時を見計らって、窓から抜け出そうとした時、背後から声がした。 「やはり、出ていかれるのですね…」 使用人のミルであった。彼女はヒュウが家出することを話した唯一の人物であった。 しかし、家を出てから両親に事を告げるように頼んだだけで、今日実行することは告げてなかった。 「どうして今日だとわかった?」 「いえ…、貴方が家を出ると言われてから、毎晩見張ってたんです」 「…そうか……後のことは頼んだよ、俺が出ていって悲しむ人なんていないしな」 「かけがえの無い子が出ていって悲しまないハズ無いでしょう。それと私も…」 「ミルさんが?」 「貴方は御家族の中で一番私を信用してくれました。家出のことを告げたのも私だけでしょう?」 「知ってたか…。まぁいい、あまり話していると父さん達が気付く」 「…では、気を付けて」 ヒュウは村を出ていった。
/230ページ

最初のコメントを投稿しよう!