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アウグス国の辺境にある村。ヒュウはそこの商人の家に産まれた、まだ十歳の少年である。
両親は仕事で忙しく、また兄弟もいなかったため、毎日がつまらなく、何より孤独であった。
そのためか、ヒュウはいつしか家を出ることを決意した。
そして、それを今夜決行することにした。
月が登り、時を見計らって、窓から抜け出そうとした時、背後から声がした。
「やはり、出ていかれるのですね…」
使用人のミルであった。彼女はヒュウが家出することを話した唯一の人物であった。
しかし、家を出てから両親に事を告げるように頼んだだけで、今日実行することは告げてなかった。
「どうして今日だとわかった?」
「いえ…、貴方が家を出ると言われてから、毎晩見張ってたんです」
「…そうか……後のことは頼んだよ、俺が出ていって悲しむ人なんていないしな」
「かけがえの無い子が出ていって悲しまないハズ無いでしょう。それと私も…」
「ミルさんが?」
「貴方は御家族の中で一番私を信用してくれました。家出のことを告げたのも私だけでしょう?」
「知ってたか…。まぁいい、あまり話していると父さん達が気付く」
「…では、気を付けて」
ヒュウは村を出ていった。
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