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数分後。
夢中で金を詰めていた、強盗の残りの一人も、無事捕縛できたジャックは、そそくさと銀行を後にする。
このまま、この事件は収束へと向かう筈である。
銀行内にいたスタッフや他の客達は、別の味方EF.rと協力し、ジャックが記憶操作を施した。
彼らは、強盗が入って来た事から先は、もう覚えていない。
※
西日に肌を灼かれながら、ジャックは街を歩いていた。
一息つき、夕飯でも買って帰ろうと考えた瞬間、まるで図ったかのように、ポケットの中身が振動する。ジャックはため息をつき、肩をすくめた。
電話の相手は、勿論、彼の上司である。
「片付いたようね。今、貴方が銀行から出たと連絡があったわよ」
「ちょろいもんだ」
「じゃあ、次の任務だけど……」
(待て待て待て!)と、ジャックは心の中で激しく動揺した。
恥ずかしいので、街中でリアクションはとれないが、自然と、携帯電話に向ける声は大きくなる。
「ちょっと待て! 次の仕事だと? 聞いてないぞ! 家にも鍵を掛けてきてないんだ!」
「言ってないんだから、貴方が聞いてるわけ無いじゃない。鍵? それは貴方の不注意でしょ?」
ジャックは、彼女の罠にまんまとハメられた事に気が付いた。――思い起こせば確かに、今日の仕事が強盗退治のみとは聞いていない――ジャックは、深くため息をついた。
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