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「……仕方無いな。次の指令は、何でありますか? ボス」
かったるさを強調した声で、ジャックはそう言った。
彼にとって、この状況では、最早開き直る他道は無い。足掻いても、無駄である。
「さっきの銀行強盗達の親玉よ。強盗の実行は手下に任せて、自分は埠頭近くの空き倉庫に待機してる。サイテーね」
「ちょっとまて。あいつら、あれで一味全員じゃなかったのか?」
「そうよ。まぁでも、あと一人なんだし、貴方なら簡単でしょ?」
(肝心な所で役に立たない奴だ)とジャックは思う。
勿論、口には出さない。出せない。
「貴方今、肝心な時に役に立たないって、思ったでしょ?」
「!……ま、まさか。……場所は、埠頭の倉庫だったよな?」
「そうよ。実際に犯行を行ったのは、下っ端だけど、親玉はEF.rよ。名はロバート・サードウ。通称“ウルフマン”。居場所の詳細は、後で送るわ」
“ウルフマン”は、EF.rの中でも、単純に腕力が強化された部類にはいる者だと教えてくれた。
肉体が強化される程度のEFでは、ジャックの的になるだけだ。だから、『簡単』などと彼女は言ったのだろう。 しかし、油断は禁物。何が起こるか分からないのも、この仕事の特徴だ。
一抹の不安と気だるさを抱え込み、ジャックは埠頭へと向かいはじめる。
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