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陽も傾き、夜の闇も、すぐ其処に迫ってきた時刻。
塩気を含んだ浜風が鼻の頭をくすぐり、なんとも心地よい。
埠頭に到着したジャックは、早速、携帯電話のメール画面を見ながら、ジェシカに指定された倉庫を、捜索する。
画面上には素っ気ないフォントで、倉庫の場所が映し出されていた。
(『S列281倉庫』……ここだな……)
顔をあげると、目の前に鉄筋コンクリート製の巨大な倉庫が現れた。
錆び付いたパーツのひとつひとつが夕陽に照らされ、奇妙な不気味さを醸し出している。
ふと、ジャックが目線を下に向ける。すると、倉庫シャッターの横にある、従業員用出入口の異変に気が付いた。
出入口ドアに、絡まっていた(と思われる)鋼鉄製のチェーンと、南京錠が、バラバラに引き千切られ、辺りに散らばっていたのである。
ジェシカから聞いていた“ウルフマン”なる人物の仕業だろう。その異様な破損状況を見ても、ジャックは驚かない。
むしろ、心のどこかでホッとしていた。ただの力馬鹿なら、何の問題も無い。
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