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男は余裕な表情のまま、手袋を脱ぎ捨てると、近くにあった壁に掌を当てた。
「……捕まるのはゴメンだ。かといって、オレは黙って退く気も無い」
ジャックはその行動を警戒し、男に銃を向ける。
次の瞬間、コンクリートで塗り固められた壁は、まるで脆い土壁のように簡単に抉られてしまった。
コンクリートの壁を、いとも簡単に抉った男の手は、毛に覆われ、指先には銀色の爪が光っている。
口元にはキバのようなモノも見える。
(なるほど。それで、通り名が“ウルフマン”って訳か……)
「驚いたか? 驚いただろうなァ。其処に落ちてる鎖と鍵は、俺が壊したんだ。たった一人で乗り込んで来るとは……愚かな奴め」
「成る程、確かに強力なEFだ」とジャックは言った。
すると男は、不機嫌そうに「あァ?」と喉を鳴らす。
「愚か者は、お前のほうだったな……取り敢えず、気絶しておけ」
自身に起こった事を理解する前に、男はぐるりと白目をむき、糸が切れた糸繰り人形のように、音を立て、その場に倒れた。
だらしなく倒れている“ウルフマン”を二三度つつくと、ジャックは頷く。
「これで、一件落着だな」
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