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『独房』とはいっても、鉄格子や硬いべッドがある一般的に想像できるそれとは、全く違う。
在るのは、銀色の合金で作られた巨大な筒と、傍らの操作パネルから触手のように伸びる、無数のパイプとコード。
たまに放出される冷気が、そこはかとなく不気味だ。
そんなモノが複数連なった光景は、正に異空間のようだ。それが此処『ホーカー・シドレー国立刑務所』の内部である。
女が操作パネルに触れ、房の中にいる人物を解放すべく、行動を開始した。
「おい! まだか! 早くしろ!」
「そう慌てるな。慌てずとも、停電の復旧だけでも、半日以上かかる。それに、誰が来ようと――」
その時、原始的なライト付きの、小銃を構えた刑務官が、彼らの前に現れた。原始的故に、電磁パルスの影響を逃れたライトが、二人を照らし、刑務官が叫ぶ。
「動くな! 誰だお前らは! ゆっくりと手を頭の上に置いて、膝を付け!」
侵入者を発見した刑務官は、即座に小銃を構え、引き金に指をかける。
だが彼等が動じる事は全く無い。刑務官を無視し、女が軽く首を動かして赤髪の男に指示をだした。
「消せば良いだけの事……違うか?」
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