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刑務官の前に立ちはだかった赤髪の男――レナードが、大きな口を左右に引き伸ばし、凶悪な笑みを見せた。
その表情に、底知れない恐怖を感じた刑務官は、レナードに向けて、小銃の引き金を目一杯引く。
火薬のはぜる声と共に、小さな鉛の塊が連戦してレナードを貫き、彼は仰け反る。だが……。
命中した弾丸が、彼にダメージを与えた様子は全く無かった。血も出ている、が、それも全く意に介していない。
「もう終わりか? んん?」
あっという間に刑務官との間合いを詰めると、向けられた小銃の銃身を掴む。 刑務官は震えていた。
「なんで……生きて……?」
「さぁ?」
彼の拳。それが、その刑務官が見た最期の光景であった。
殴り倒した刑務官に、唾を吐きかけ、レナードは悪態をつく。
「あぁ、クソ! 痛ぇなボケ! 十七……いや、十八発もブチ込みやがって」と言いながら、体に埋まった弾丸をほじくり出していた。
しかし、その様子に、着物の女は目もくれず、操作パネルをいじりながら、無関心そのものな口調で淡々と話す。
あくまでも、彼女の興味は目の前の独房にしか無い。
「機材に、銃弾が当たらなくてよかった。そこのところは、きちんと理解していたようだな」
「当たり前だ」
レナードが撃たれた傷は、既にどこにも見当たらない。
喉を鳴らし、「見くびるなよ」と、捨て台詞を吐く。
「大声を出すなよ。……それより、今の銃声を聞きつけて、他の刑務官がやって来る可能性もある。しっかり見張っていろ」
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