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「変わった事か……そうだな……お前みたいな、面倒な奴のお守りを任せられてばかり、て事くらいか」
かったるそうに、ジャック答える。
それを聞いたケビンは、ケラケラと笑いながら、プラスティックの塊を後部座席へと放り投げた。
三十分後。
いよいよ針葉樹林帯を抜けると、車は、ひらけた場所へとやってきた。
これまでの単調で窮屈な景色から一転、視界は広くなり、整った芝生の中の一本道と、その先に見える巨大な建造物が姿を現す。
いや、『建造物らしきもの』といった方が、正しいのかもしれない。
無機質な高い灰色の壁に囲まれた、ホーカー・シドレー国立刑務所は、草原に降り立ったUFOのような、奇妙な雰囲気を醸し出している。
ケビンは「やっと着いたか」と、大あくびに、背伸びをまじえる。ジャックもそうしたいのは山々であったが、生憎、隣の馬鹿は、運転免許を持っていない。
実技はともかく、筆記で毎回落とされるのだそうだ。
黒いSUV車は、巨大な壁が途切れる場所、目の前のUFOに存在する唯一の(今となっては、そうでもない)出入り口に、吸い込まれていった。
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