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刑務官は、気の抜けた返事をした。
「その通りです。自分は、破壊されたC棟から一番離れた、A棟に居たんですが、音は其処まで聞こえてきましたよ」
ジャックが廊下の端に目をやると、現在地を示すボードが柱に固定されていた。『B棟』と書かれている。
B棟は、事件の起こったC棟とは、隣合わせだ。
「厄介なEF.rもいたもんですね。警報機はおろか、無線機や電話まで使えず、完全に孤立無援でしたよ。幸い此処には、仮死状態の囚人しかいませんから、暴動は起きませんでしたけど」
二人は、おしゃべりな刑務官の話に適当に相づちをうつ。
しばらくし、角を曲がったところで、刑務官は急に立ち止まる。
「あそこです」
刑務官が、陽光が射し込む場所を指さした。
言われずとも判る。目の前には、大穴が空いていた。
機材と、壁を構成していた物の残骸があちこちに散らばり、最新鋭の施設の中でここだけが、廃墟同然の様相を呈していた。
現場の調査はあらかた終了したのか、数名の警察官しか、その場にはいない。
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