prologue "序章"

4/10
前へ
/146ページ
次へ
   携帯電話から鳴り響く電子音が、脳を直接揺さぶり、過度のストレスと、眠りからの覚醒を与えてくれる。  彼は、たった今まで身を沈めていたベッドから手を伸ばすと、喚き散らしている忌まわしい機械を探り当て、乱暴に掴み取った。  通話ボタンを寝起きの握力で押した後、片手で、寝癖がついた短めの金髪を掻きながら、電話の受話部分を耳に当てる。 「ふぁい……なんだ?」  欠伸で、鳶色の目に涙が浮かぶ。眠い。 「遅い! あたしからの電話は、いつも三秒以内に出ろって言ってんでしょ! アホジャック! クビにされたい?」  ひどい音割れと、内蔵スピーカーから溢れる、ヒステリックな怒号。  電話の相手はジェシカ。彼――ジャックの上司的な存在だ。尤も、ジャックは今まで一度も、彼女の姿を見た事は無い。が、声は可愛い。  ジェシカはいつも、仕事の内容を電話で連絡してくる。彼女の持つ『EF』が関係しているらしいが、ジャックは詳細を知らない。知る由もない。  
/146ページ

最初のコメントを投稿しよう!

146人が本棚に入れています
本棚に追加