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「オイ……仕事ならケビンに言え。俺は、この一週間マトモに寝てないんだぞ」
誰が聴いても寝起きと分かる、そんな情けない声で、ジャックは応える。
そして、ふるふると頭を振り回し、何とかして眠気を除こうとした。
「黙らっしゃい。人手が足りないの。この仕事を拒否したら、また減俸するわよ?」
鼓膜に、ジェシカの冷ややかな言葉が突き刺さった。この一撃で、眠気は完全に吹き飛んでしまう。
『減俸』。ジャックにとって、これほど恐ろしい言葉は無い。
ジャックは口を尖らせ、苛つく。
「わかりましたよ。仕事って……?」
「よろしい。で、内容だけど、貴方の家の近くに、『アラン・ロッキード銀行』ってあるでしょう?」
ジェシカの言葉を聴き、ジャックは、眠気が撤去された脳内から、記憶を漁った。
アラン・ロッキード銀行――ジャックの住むアパートから、ほど近い場所にある銀行だ。
ジャック自身も、ATMを利用する為に何度か立ち寄った事がある。受付が美人。
ジェシカは話を続ける。事務的で、早口だ。『向こう』の忙しさが良く伝わってくる。
「そこに、午後二時四十五分頃、EF.rとおぼしき強盗が入るわ。いつものように、ちゃちゃっと片付けて来なさい」
ジェシカは早口で任務内容を告げると、返事を返す間も無く、通話を切ってしまった。余程忙しいのだろうか。
ジャックは、如何ともしがたい倦怠感に襲われながら、時計を見ると、
“PM 2:19”
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