prologue "序章"

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  (アホか! 時間が無さ過ぎる!)  だが、遅刻ごときで仕事に失敗し、これ以上減俸になったら、彼にとって本当にマズい事でもある。 (俺の人生プランは、滅茶苦茶になってしまう……)  頭を抱えてのたうち回りたい衝動を抑えつけ、ジャックは急いで着替る。いつものジーンズに、安物のジャケット。ドッグタグはご愛嬌。  準備完了。すぐに指定された銀行へ向かおうとしたジャックは、重大な案件に気付き、悪態をつく。  部屋の鍵が、何処にも無いのだ。  急いでいる時に限って、余計な心配事や厄介事が、増えてゆく事がある。これはまさに、その典型。  更に最近は、空き巣の被害が、この付近一帯に出ているという。ならば尚更、鍵をかけずに部屋を出る事は出来ない。  彼は急ぎ、鍵を探し始める。だが、あくまでも冷静に、だ。  まずゴミ箱を漁る。だが、出てくるのはファストフードの包み紙のみ。鍵は見当たら無い。  次に、ベッド付近を捜す。無くしていたボールペンを発見! ……鍵は無い。 (悲しいが、狭い部屋だ。必ず『灯台下暗し』がある筈……)  そこでふと、再び時計に目が移った。  “PM 2:33” (逆に考えるんだジャック――鍵なんかかけなくても、盗られる物なんか何も無い――と、考えるんだ)  
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