146人が本棚に入れています
本棚に追加
(アホか! 時間が無さ過ぎる!)
だが、遅刻ごときで仕事に失敗し、これ以上減俸になったら、彼にとって本当にマズい事でもある。
(俺の人生プランは、滅茶苦茶になってしまう……)
頭を抱えてのたうち回りたい衝動を抑えつけ、ジャックは急いで着替る。いつものジーンズに、安物のジャケット。ドッグタグはご愛嬌。
準備完了。すぐに指定された銀行へ向かおうとしたジャックは、重大な案件に気付き、悪態をつく。
部屋の鍵が、何処にも無いのだ。
急いでいる時に限って、余計な心配事や厄介事が、増えてゆく事がある。これはまさに、その典型。
更に最近は、空き巣の被害が、この付近一帯に出ているという。ならば尚更、鍵をかけずに部屋を出る事は出来ない。
彼は急ぎ、鍵を探し始める。だが、あくまでも冷静に、だ。
まずゴミ箱を漁る。だが、出てくるのはファストフードの包み紙のみ。鍵は見当たら無い。
次に、ベッド付近を捜す。無くしていたボールペンを発見! ……鍵は無い。
(悲しいが、狭い部屋だ。必ず『灯台下暗し』がある筈……)
そこでふと、再び時計に目が移った。
“PM 2:33”
(逆に考えるんだジャック――鍵なんかかけなくても、盗られる物なんか何も無い――と、考えるんだ)
最初のコメントを投稿しよう!