prologue "序章"

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   客や、銀行のスタッフも怯えている。先ずはその元凶である、強盗達の持つ銃を捨てさせねばならない。  ジャックは、徐々に間合いを詰める強盗達に向け、二言三言指示を与えた。 「まぁ落ち着きなって。取り敢えず、銃はその場に置いて、隅に移動してくれ。警察が来るまで、その場に待機。決して、動くんじゃないぞ」  次の瞬間、フッと目が虚ろになり、自己を失った強盗達は、ゾロゾロと行進を開始した。  スタッフや他の客たちが、異変に気づくのに時間は掛からなかった。皆一様にポカンと口を開けたまま、状況を理解出来ずにいた。  ジャックは、『意図した相手に語りかける事で、操る事ができる』というEFを持っている。  その際、『声』の効果を掛ける対象は自由に設定できるが、対象が耳栓等をしていれば無効化される。持続時間も、バラつきはあるがあまり長くは無い。  『声』を使わずとも、視線を合わせた対象一人だけを、気絶程度はさせる事が可能である。が、相当の疲労と、連続使用が不可能な為、ここ数年は使用すらしていなかった。  ひょっとすると、既に退化して消えたかもしれない。  
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