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『ふぅ…落ち着いたぁー』
出された御茶とお茶菓子を頬張りつつ、葵が満足気に笑った。
『良かったです。』
少女もにこやかに笑いながら応対した。
『なぁなぁ、君なんて名前なん?』
葵が親しげに話し掛けると、少女は軽くはにかみながら
『…ゆうとです。』
え?
俺も葵も一瞬固まった
『男の子なんやね。』
『か、可愛いから女の子かと思ってたー』
苦笑しながら俺と葵の会話を聞いていた少女…もといゆうとは、
『まぁ、こんなの着てるのが悪いんで…』
と自分の着物の裾を握って苦笑してみせた。
それと同時に
『ゆうと!!ただいまっ!!』
元気よく店の戸を開く音がしたかと思うと、
金髪の少年が駆け込んで来た。
『鋲!!静かに開けてよっ!!』
『いーだろべつに!!…っと…お客か。』
ゆうとと言い合っていた鋲と呼ばれた少年を見て、俺は驚いた。
『る、き…!?』
そう。鋲の風貌は流鬼にそっくりなのだ。
『…え?』
怪訝そうな表情を浮かべる鋲に、
俺は慌てて
『知り合いに似てたんだ。』
そう返すのが精一杯だった。
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