空は泣きそうな程鉛色で

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「ふ~じ~わ~ら~!!!!!!」 2年生の教室の廊下で、薫ちゃんが馬鹿でかい声を出す。 必死で止めようとしたけど………あたしに止められるわけがなかった。 「おい、藤原ナオヤってヤツ知ってるか~??」 通り掛りの子を捕まえて薫ちゃんがそう聞けば、その子は遠慮がちに教室の隅を指差した。 「あれか?アヤ。」 そこにいたのは間違いなく あの、ヒマワリみたいな笑顔をした藤原くんだった。 「うん、そうだよ。」 そう言えば、薫ちゃんは早速とでも言いたげに 「藤原、ちょっと面貸せ。」 ってそれ、恐喝だよ!! 「お前か、藤原。」 「え、あ……はい。俺に何か用事っすか?」 藤原くんは相変わらずのほほんとした笑顔で、薫ちゃんの外見にはさほど驚かずにそう言った 「ふ~ん……。ヘタレみたいな顔してんな、お前。」 「しっ、失礼だよ!!薫ちゃんってば!!やめてよ、もう……。」何が恥ずかしいって クラスの人みんなに注目浴びてしまってるこの状況が 1番恥ずかしい!!! 「笠原先輩の友達っすか?」 「えっ……そうだよ……?」 藤原くんは ちょっとだけ間を置くと、耐えきれないとでも言う感じで 勢いよく吹き出した。 「っはははは……!!笠原先輩の友達めっちゃ面白いっすね~!!俺初対面でヘタレとか言われたの初めてっすよ!!」 どこまで純真なんだろう。 あたしも薫ちゃんもポカンと口を開いたまま、止まった。 今まで 薫ちゃんを友達と言っていい印象を持たれたことは正直ない。憤慨するか、恐れられるかのどちらかが当たり前だった。 「改めまして!!俺、藤原ナオヤって言います。先輩は?」 「……玉城。玉城薫だよ。」 「よろしく、玉城先輩!!」 きっとこんな屈託のない良い子が、たくさんの恋愛をしていくんだろうなと あたしはボンヤリ頭の隅で思った。
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