空は泣きそうな程鉛色で

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もともとノリのいい薫ちゃんと藤原くんは どうやら息統合してしまったらしく、あたしはそーっとその場から抜け出した。 別に何かが嫌だった訳ではなく、何かに憤慨した訳でもない。ただ少し、こういう雰囲気に慣れないだけだ。 「あ、笠原!!」 突然名前を呼ばれて立ち止まると、 目の前にヒロキくんの姿。 思わず立ちすくんだ。 「あの、さ。」 近付いてくる。 たかがそれだけのことに 期待して高鳴る鼓動が憎い。 「今週の土日暇??」 「う、うん!!」 あまりの衝撃に最初の「う」がかすれてしまったけど いつもよりは たぶん 上手に返事ができたはずだ。 「じゃあさ、クラスのヤツらと花火やるんだけど、来ない?」 「あたしが行っていいの??」 「ん。つか、駄目だったら誘わなくねぇ??」 嗚呼。 この笑顔が好き。 あたしの存在丸ごと包んでくれるみたいな 笑顔が好き。 ほんの少し前に言われた衝撃的な一言だって、 忘れてしまうくらい。 「い、行く。行きたい。」 初めて口にした積極的な言葉に自分でも苦笑いしそう。 「決まり、な。詳しいこと決まったらまた連絡するわ。笠原、メルアド聞いてもいい??」 「もちろん!!」
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