空は泣きそうな程鉛色で

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授業が終わると図書室に入り浸り、いつものように本棚から本を数冊出して 夕暮れに染まる窓際の席で 誰に邪魔されることなく 本を読む。 それは、いつものこと なんだけど。 今日は違う。 ケータイの受信フォルダに残る 『谷本ヒロキ』の文字。 無機質な言葉で、ただ 『俺のメルアドです。花火、一緒に楽しんで、高校生活最後の思い出いっぱい作ろうな!!』 たかがそれだけ。 なのに 胸が高鳴る。 きっとただのクラスメイト。 きっとただの友達感覚。 わかってるのに。 胸の鼓動は まるで徒競走でもしたみたいに ドキン ドキン と、呼吸を繰り返す。 ねぇ 一歩でもキミに近付けたかな?? メールをくれたこと 自惚れてもいいのかな?? 返事を遅く返すとか、絵文字使うとか、 きっとみんなみたいに 上手くいかないと思うけど どんなに忙しくても 絶対に返事は返すんだと ちっぽけなケータイに誓った。
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