空は泣きそうな程鉛色で

6/12
前へ
/100ページ
次へ
そんなふうに あたしのことを見ていたんだろうか? あたしのことを評価してくれていたんだろうか? なんだか嬉しい。 顔が綻ぶ。 「谷本先輩があんまりにもんなことばっか言うからどんな人なんだろーって、一回見に行ったことあって。それで。」 「そ…なんだ。あの、がっかり……した?」 「や、逆です。すんげー可愛いなって。」 「……え!?」 か、可愛い!? あたしが?? 教室の隅っこで黙って本読んでるような根暗なあたしが? 「あ。俺、藤原ナオヤっていいます。谷本先輩と同じサッカー部で!!」 「は……はぁ。」 「テキトーにナオとか藤原とか呼んで下さい。」 「うん。」 さわやかな笑顔だな。 あんまりあたしの学年では見掛けない、体育会系の笑顔。 クシャッて顔崩して笑うのはヒロキくんに似てる。 「先輩、帰りっすか?」 「あ…うん。帰ろうかと。」 「じゃあ、一緒に帰ってもいいっすか??夜道、危ないし。」 「え……でも、悪いよ。」 家反対方向だったら尚更。 それにこの時間ならまだそんなに変な人もいないし。 「いいっすよ!!ほら、行きましょっ!!!!」 さりげなくあたしの荷物を持って、笑う。図書室を出て電気を消して、藤原くんはそのままズンズン前を歩いていった。 「お?藤原、珍しいなこんな時間に。どうした?」 「あ、センセー!!これ、宿題!!図書室に置いてってて。」 「ん?おぉ。間に合って良かったな。おっ、なんだ藤原、笠原と帰るのか??」 あ。 この先生、国語の先生だ。 目があって頭を下げると、先生は意味ありげに笑った。 「お前~、送り狼にはなるなよ~??」 「ばっ……なんねーよ!!」 「っははは、じゃあな!!」 「ったく……ごめんね?先輩」
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

302人が本棚に入れています
本棚に追加