空は泣きそうな程鉛色で

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薄暗い夜道。 照らす街灯の灯りは頼りなく、軋む自転車の音は まわりの音を消していく。 「先輩?」 「なに……?」 「さっき、何の本読んでたか、聞いてもいいっすか?」 灯りの眩しさに 顔も上げられずただ、うつ向くと自分の頼りない靴先が見えた「ファンタジー。」 「ファンタジー?」 「冒険小説。」 「あ!!それって今有名な眼鏡かけた魔法使いが主人公の?」 まるで小さい子供がクイズの正解を1番早く考えついたみたいな、満足気な笑顔につい笑みが溢れてしまった。 「違うよ。」 「え、違うんすか!?」 「ちょっと難しいやつだけど。日本語訳してない原本なの。」「それって文が全部英語ってことっすか??」 「うん。」 引かれちゃったかな。 そう思ってちらっと藤原くんの顔を見上げれば、 「すっげぇ!!!!!!」 キラキラした笑顔。 「ね、今度俺にも英語教えて下さいよ!!俺英語苦手で!!」 「や、でも教えられる程のものじゃないよ……?」 「先輩、この通り!!」 パンっと両手を合わせて 頼みこまれてはもう 断わる言い訳も思いつかなくてあたしは 「ふ、藤原くんがいいなら。」 思わずその申し出を 了承してしまっていた……。
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