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「そういえば康介、昨日送っといたメール見た?」
ようやく並んだところで里香は僕に問う。
こういうところは本当にサッパリしている。
聞こえないふりをするのもありだったが、それだと大人気ないし、後で何されるか分かったもんじゃない。
……それはそれで悪くはないんだけど。
「うん、見たよ。
宿題見せてってやつでしょ?」
「そうそう、それ。
もちろんやってるんでしょ?」
「そりゃ、あんなメールが来たからにはやっとかなきゃね……
あの後、急いで残ってた分を終わらせた」
「あはは、なんか悪かったわね……
ちょっと最近、いろいろ大変なのよ……」
「あぁ、なんか疲れてる感じはしたんだ。
少し心配だったんだけど、聞くのもどうかと思って……」
「……そんな変な遠慮すんじゃないの。
私達、いったい何年付き合ってると思ってんの?
幼稚園前からよ?」
「あはは、そうなんだけどさ……」
そこで僕は言葉を切る。
……そう、幼稚園前からの付き合い。
今でも毎日のように顔を合わせ、言葉を交わす。
……だから、手に取るようにとまではいかなくても、相手がいつもと違うことぐらいは察せてしまうのだ。
「まあ、そこが康介の良いとこでもあり、悪いとこでもあるんだけどね……」
僕が黙り込んだことを気にしたのか、里香はそうやって締めくくった。
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