《第一章》

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まあ、それも分からなくはないわけで、その理由はやっぱりこの幼なじみという関係にあるのだろう。 要するに付き合ってるとか夫婦みたいだとかみんなにからかわれるわけだ。 ……それでも二人一緒に登校するのは習慣なのか、あるいは…… 「ちょっと、早くしてよね!? 宿題写す時間がなくなっちゃう!!」 「あ、うん、分かった。 すぐ行く!!」 僕は急いで自転車の籠から鞄を取り出し、里香の後を追う。 先ほどとは正反対な光景だ。 コンクリートで塗り固められた地面を急ぎ足で蹴る。 鞄が邪魔で走りにくいけど、そんなことはもう慣れた。 遅刻しそうになったことは今まで数えるほどしかないけれど、今のような状況は数え切れないほどある。 同じクラスになってから、特に最近は毎日だ。 なんかいいように使われてるような気もするけど、僕は人の頼みを断れる人間じゃないし、それに里香には昔からいろいろ支えて、助けて貰ってる。 転んだ時は手を差し伸べてくれるし、必要な時は引っ張ってもくれる。 それこそ数え切れないほど。 だから僕は少しでも里香の役に立ちたいし、そのためならばいいように使われようと構わない。 ……これを言ったら里香には叩かれたりするだろうけど。 できれば、あと踏んだり、蹴ったりなんかもして頂きたい。
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