《第一章》

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里香が教室の扉に手を掛け、開ける。 時々、建て付けが悪いのか少し力を込めないといけなかったりするのだが、今日はすんなりと開いた。 僕もその後に続く。 まだHRが始まるまで十五分とちょっと時間があるので、教室にはまばらに人が見えるばかり。 ちなみに五分ほど前になると急激に増える。 僕と里香は各々の席――僕は真ん中らへんの前から二番目の席、里香はそれの二つ後ろ――に着く。 適当に鞄から荷物を引っ張り出し、本日提出することになっている宿題を探す。 周りからは真面目と言われやすい僕なのだが、だからと言って置き勉などをしてないわけでもない。 初めから予習、復習をするつもりのない副教科はもちろん、その日の内にするつもりのない教科も机の中だ。 だから、鞄の中に入っているのも少なく済むわけで、その宿題も簡単に見付かった。 数Ⅰのプリント数枚、裏表。 表は基礎問題、裏は応用問題となんとも分かりやすい作りである。 やろうと思えば出来るが、後に後にと回したくなるような量。 あるいは何枚かだけ終わらせて少し休憩、そしてそのままになんてなってそうでもある。 昨日、里香からメールが来なければ実際にそうなっていたかもしれない。 複雑は複雑だが、とりあえず感謝。
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