《第一章》

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「……ふーん、まあいいけど。噂と言えば、宇宙人がなんちゃらなんてのもあったよね。他にも公園に潜む切り裂き魔だとか」 「あぁ、そういやそんなのもあったな。詳しくは覚えてねえし、どちらにしろ一週間ぐらいで途切れちまったけど。隆史は何か覚えてるか?」 「あぁ、そんなのもありましたねぇ…… 確か宇宙人が去年の秋と冬の間ぐらいで、公園のは夏休みの終わり頃でしたっけ? どちらも信憑性の欠片もないものでした」 「まあそんなものだよ、噂なんて。とは言っても、公園のは里香と一緒に見に行ったんだけど、あれは切り裂き魔とかじゃなくて、なにか本当におかしすぎた。日常の外側ですらなくて、常識の外側にあるような感じかな?」 それは前述した通り、去年の夏休みの終わり頃。 僕と里香は昔よく遊んでいた公園で事件があったとかで、勉強の合間を縫って、その公園を二人で見に行ったのだ。 夏の真っ盛り、クーラーの効いた部屋にずっと籠もりきりだったため、外に出るのはそれなりに億劫だったのだが、それでも汗を流しながら公園へと自転車を漕ぐのは、キツいながら気持ち良いものがあったと記憶している。
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