《第一章》

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そんな現場にみんなが、悪魔だの、死神だの、切り裂き魔だの、そんな噂を流したのだ。 そしてその中でも少なからず現実性の残っている切り裂き魔についてが広まった。 とは言っても、その現場は僕達の行った次の日にはあらかた元に戻っていたらしい――僕にはむしろこっちの方が驚きだが――し、ただの噂なだけでその切り裂き魔を見た者はなし。 もちろん被害者の数も零。 その元に戻ったとかで一時的に噂は誰一人と知らぬ者なしと言われるぐらいにはなったものの、結局は一週間ぐらいで立ち消えになってしまったのだが。 ちなみに宇宙人がなんちゃらって噂はどこかの誰かが宇宙人を見たとかなんとか言う、アホらしいにもほどがあるもの。 ただその噂が広まり出した次の日ぐらいにUFOの特番があって、みんながふざけてそれに乗っかったってだけのやつだ。 「へぇ、それは見たかったですね。俺たちは噂に便乗しただけだし、そこまで詳しくはなかったですから」 「どちらにしろ、もう一年以上経ってるし、悔やんでも遅えよ。直ってたのだって、キレイに元通りってわけでもなかったらしいし、たぶんどっかの役人が危ないからって、なんかしたんだろ。そんな現実離れしたことなんて、そうそう簡単には起こりはしねえよ」
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