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二人の話しを聞きながら、頬杖をつく。
時折、相槌を打ちながら、あるいは短い返事を返しながら。
先ほどは少し語ってしまったが、僕の立ち位置は基本的に聞き役だ。
決して主役にはならないし、なれない。
何気にみんなを影から支えているようなサブキャラ。
そんな存在、それがこの僕、浅野康介なのだ。
「はい、ありがと、康介。おかげで助かったわ」
「どういたしまして。けれど、写すばかりじゃなくて、たまには自分でやってよね?」
「あー、はいはい、いつかねー」
里香は僕のプリントを机の上に置くと、めんどくさそうに手を振りながら、またもや自分の席に戻って行った。
僕は小さく嘆息。
あの様子だとまだまだ自分でやる気を出すのは先らしい。
一度、キツく言っておくべきだろうが、前にそれで全く迫力がないと鼻で笑われた時のことはまだ記憶にも新しい。
またあの屈辱感を味わうのかと思うとゾクゾクして楽しみで仕方ない――ではなくて、ビクビクしてしまい嫌になる。
結局は里香のためにならないことが分かっていながら、保留することにした。
あと里香のイメージが悪くならないよう言っておくが、僕が怒ってからの何週間かの間は里香も僕の言った内容を理解してくれたらしく、ちゃんと言うことを聞いてくれていた。
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