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季節が秋ということもあり、日は傾き始め、茜色に辺りを染めている。
教室の窓から見える校庭には、紅葉した葉がその光を受け、さらに赤さを増していた。
それこそまるで優しく包んでくれる炎のように。
そんな神秘的な光景があろうとも、教室内はまったく変わらず、みんなは早く帰宅しようやら寄り道しようやらとガヤガヤやっていた。
「これから隆史とゲマズに行こうって話してたんだが、康介はどうする?」
普通ならここはゲーセンとかなのだろうが、そうではない。
「うーん、どうしよ…… 里香はどうする?」
「……どうしてそこで私に振るの。行きたければ、三人で行けばいいでしょ」
「うーん、そうなんだけど、なんとなく」
「なんとなくって、あんたね……」
呆れ顔で嘆息する里香。
言いたいことは分かる。
いい加減、里香に依存するのも止めるべきだ。
いくら幼なじみと言っても、高校生にもなって、一緒に登校して、一緒に下校しようなんて、普通はありえない。
現実はそんなギャルゲーみたいには出来てない。
けれど、怖いのだ、少なからず関係が薄くなるのは。
昔のようでなくなるのは。
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