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「あっ、目が覚めたのねえ。
あまりにもぐっすり眠ってたものだから、死んじゃったんじゃないかと心配したわよぉ」
突然、機械かなにかによって大きく拡大されたのであろう、この状況とは遠くかけ離れたなんとも明るい声が聞こえた。
どこから聞こえたのだろうと顔と目線を必死に動かしながら、同時に周りの状況も確認する。
見た感じ、この僕が横になっているベッドやらなんやらが置いてあるに相応しい場所――つまり病院――のように思える。
少なくとも医療が関係する場所だと考えてまず間違いないだろう。
「ちょっとどこ見てるのよぉ?
私はここよぉ」
キョロキョロと顔だけでなんとか周りを見回していると、また先ほどの声が僕の鼓膜を刺激した。
声の聞こえた方に顔をグイッと傾けると、大きなガラス窓の向こうで、一人の女性が子供っぽい仕草でこちらに向かって、大きく手を降っている。
そんなに手を振られたって、こっちはどう反応していいのか分からない。
そもそもなんでこんな場所にいるのかさえ分からないのだ。
かなり返事に困る。
「えぇと、どうして僕はこんなところに連れてこられてるんですか?」
自分の首を絞める結果になるかもしれないが、まずこれを聞かないことには始まらない。
まず誘拐なら一緒にいた里奈も連れ去られてるはずなのだ。
「説明することはいろいろあるんだけどねえ……」
返事をするということは、こちらの声が届くようにもなっているらしい。
彼女は一呼吸置いて、もう一度、口を開く。
「まずあなたはヒーローなのよぉ」
なんともあっけんからんと、彼女はそう言い放った。
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